松山研究室/Matsuyama Lab
パブリックエンゲージメント/Pablic Engagement

【イベント報告】「台風制御」とその社会的課題を考えるポスターパネル展示を実施しました

 2025年5月30日(金)・31日(土)、キャンパス公開にて、「台風制御」をテーマにしたパネル展示を実施し、その前で来場者の方々と対話を行いました。本展示では、近年被害が拡大している台風に対して、たとえば飛行機からのシーディングという技術を使って台風の進路や強度に影響を及ぼす“台風制御”技術の構想を紹介しました。

 このような未来の技術に対して、「実現できるの?」「少し怖い」といった率直な声のほか、「どうやってルールを決めるのか?」「誰か損をしてしまう可能性があるのか?」といった問いも数多く寄せられました。展示では「ELSI(倫理的・法的・社会的課題)」の観点からも台風制御を考えるよう促し、科学技術の進展によって生じうる新たな課題について来場者とともに考えました。中高生から機器開発をする企業の方、海外の方が多く立ち止まってくださりました。当日はあいにくの雨模様でしたが、「今日くらいの雨の強さにおさえられるならいい」「“ほどほど”の雨風の強さにしてほしい」といった声もあがり、“ほどほど”のレベルとはなにか?を一緒に考え対話をする時間もありました。

 “台風制御をしてほしい/してほしくない”というシール投票では、「台風制御をしてほしい」が大半でしたが、「開発費用が莫大になりそう」「台風制御についてよく知らないので判断がつかない」といった理由により、「台風制御をしてほしくない」に投票をされた方も多数いらっしゃいました。

 来場者の中には、「松山研究室は技術そのものより、社会との関係やルールの在り方を研究しているのですか?」という質問をされた方もおり、松山研究室の研究の意義が伝わったと感じました。また、『制御』という言葉はロボットのようにボタン操作が可能なものに対して使うイメージがあるという視点から、「台風制御技術における『制御』という言葉の意味をどうとらえるか?」といった表現に関する疑問や、「哲学者ならどう考える?」といった問いかけから「わたしたちは台風についてどれだけ知っているだろうか?」と議論が深まる場面も見られました 。

 こうした対話から得られた問いや気づきを、現在「ELSIマップ」として整理する作業にも取り組んでいます。これは、寄せられた問いを哲学的・倫理的観点から再構成し、どのような価値観や懸念が背景にあるのかを可視化する試みです。

 来年は、“台風を制御する”とは一体どのようなことなのか具体的な紹介を含め、松山研究室で蓄積された対話の内容から、どのような論点が抽出されたのかをより詳細にお伝えできるよう研究を進めていきます。

(報告者:小林知世)

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